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「読める」かどうかが、人生を決める

  基本の読みとか論理的推論ができない子は、いくら知識を教えても、それを整合的に使えるようにならないんです。学力の差が、知識量とかやる気の問題であれば、勉強したくなった時にやればいい、とも言えますが、そうではなくて、「読める」かどうか、が大きい。読める人は、それほど痛痒なく受験勉強をやって、入試を突破する。

 これは、国立情報学研究所の新井紀子教授の言葉です。新井さんは最近、『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)で基礎的読解力の重要性を訴えました。新井さんは「ロボットは東大に入れるか」プロジェクト(「東ロボ」プロジェクト)の旗振り役としても知られていますが、AIと共存することになるこれからの社会において、私たちが身につけるべき最も大切なスキルとして基礎的読解力を挙げたのです。
 新井さんは、全国25,000人の中高生を対象に、中学校レベルの教科書が「読めている」かどうかを調査しました。その結果は驚くべきものでした。「中学校を卒業する段階で、約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない」「学力中位の高校でも、半数以上が内容理解を要する読解はできない」「進学率100%の進学校でも、内容理解を要する読解問題の正答率は50%強程度である」等々、中高生の惨憺たる状況を明らかにしたのでした。
 詰め込み学習で知識は得ていても、ドリル学習で計算はできていても、教科書の意味を正確に理解できていないわけです。そして、知識や計算は、絶対に人間がAIにはかなわないものですから、詰め込んだ知識や計算の速さがいくらあったって、それでは将来、AIに職をとられてしまう恐れがあるのです。
 そして、もうひとつ重要な発見がありました。「読解能力値と進学できる高校の偏差値との相関は極めて高い」ということです。たかだか教科書を読める程度の能力が、実は学力を決定的に決めている可能性があるということです。
 いつの頃からかプリント学習が当たり前になってしまいました。学校でも教科書が軽んじられるようになってしまいました。新井さんはこうも指摘します。

  プリント学習がそうですよね。穴埋め型の学習が多い。蛍光ペン型学習とかもそう。これを一生懸命やっていると、いくつかのキーワードと数字で「たぶんこれだろう」となる。教科書が読めていない子がたくさんいる、ということです。文章を読んでいるようで、実はちゃんと読んでいない。キーワードをポンポンポンと拾っているんです。

 ドリル学習やプリント学習は、簡単に「目先の点」を与えてくれますが、そうした学習のクセがついてしまうと、将来、伸び悩んでしまうのです。皆さんは、目の前の教科書をどう読みますか?(S)

〔参考〕新井教授が行ったリーディングスキルテストの問題例。

 アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから一つ選びなさい。

 セルロースは(  )と形が違う。

①デンプン  ②アミラーゼ  ③グルコース  ④酵素

学習力創造アカデミー 学創(GAKUSO)