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エデュカーレ2020年9・10月号~ 君たちはどう生きるか

小説を読む価値、芸術に触れる価値

 学者の中にはオーケストラに参加するなど芸術に触れている方がとても多くいます。芸術と知能には深い関係があるという証拠がたくさん見つかっています。ぼくの経験から言っても、優秀な人たちは、相当量の小説を読んだり、美術館を巡ったり、クラシック音楽に親しんだりしているのです。
 一昔前、ある教え子から「小説は何の役に立つんですか」と訊かれたことがあります。それに対してぼくは次のようなことを答えました。
 それはある種の損得発想から出る問いではないか。役に立つというのは、今持っている価値観に合う何かがあるということだと思う。でも、本当に良い小説は、その価値観自体を変えてくれる。損を得に変えてくれる。君を一回り大きくしてくれる。読み終わった時に、世界が違って見えるんだよ、と。
 例えば、嫌なことばかりで自分は運が悪いと思っている人が、すばらしい小説に出会って、そういう嫌な経験が実は自分にとって素晴らしいことなんだと納得したりする。こういうことが起こるわけです。そして、前向きになって実際に人生が変わっていくということが起こったりする。素晴らしい芸術には人生を変える力があるのです。
 芸術は自由な意志の発露です。学問を含むあらゆる人間の営為がその時々の人間の自由な表現から生まれ発展してきました。そこには楽しみや生きがいがあります。もし君がそれに触れ、感動を味わったなら、まさに世界の見え方が変わるはずです。嫌々やっていた勉強の裏に、発見の感動と喜びに打ち震えながらそれを発展させてきた先人たちの影を感じることができるのです。
 そういう経験をした人とそうでない人では、ひとつ勉強への向かい方をとっても違ったものになるでしょう。そして人生が違ったものになると思うのです。
 芸術は真に生きる力を与えてくれるものです。とても自由なものなのです。君を自由にしてくれるものです。目先の点数なんていう小さな損得発想から離れて、人生で大切だと言えるものに触れてみましょう。そうしたら、自由な気もちで、目の前の「義務」が違うものに変わって見えるかもしれません。
 そして、人類が作ってきた学問もそんな芸術の一つだと思います。「勉強」をそのようなものとして見ることができたら素晴らしいことだと思いませんか。
 芸術の秋、自由な意志からつくられたたくさんの「作品」たちに君はどう接しますか?