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かたい心の読書のすゝめ

 読書の秋です。
 振り返ってみると、塾で、せんせいなんてものの真似事をしていた大学生の頃から、ぼくは君たちに、「本を読め」とくり返し言ってきました。それはおそらく、自分自身の経験からの真心の言葉でした。心底、本に救われたと思っていた当時のぼくは、自らの感動と、まだまだやわらかい心と、青臭い教師論を片手に、君たちに「本を読め」と言っていたのです。
 時が経って、ぼくの心はだいぶかたくなったし、いろんなことに感動することも少なくなってしまいました。だけど、やっぱり、ぼくは君たちに「本を読め」と勧めたいと思っています。
 かたい心で読書を勧めるというのは、本当は一番やりたくないことだったのだけれど、若かったあの日のように、よくわからないままやってみることを今日は選んでみようと思います。
 何で読書を勧めるのか。たぶん、読書こそ頭をよくするからです。ぼくは君たちに頭の良い人になってほしいと思っているのです。目に見える学歴や地位なんかに守られなくても生きていけるくらいの頭の良い人になってほしいと思っているのです。
 読書は頭を良くします。それは本から知識を得るというのとはちょっと違う。知識を得るために本を読むという人は、ちょっと残念な人だと思います。そういう人はわかりやすいマニュアル本やトリセツばかりを好むんじゃないでしょうか。それで人生「得する」こともあるでしょう。でも、そういう人は、「深く」知ることはないのではないかと思います。そして、小説や哲学書を味わえないのではないかと思います。
 本を読むというのは、知識を増やす行為ではありません。理屈や原理を考え、理解する行為です。なぜそうなったのか、どうしてこうなるのか、こういう理(ことわり)を学ぶことなのです。小説はその意味で、人間の抱える問題の理(ことわり)に迫るものなのです。小説を読む人生と、読まない人生にははっきりとした違いがあらわれます。
 そのようにして本を読むと、知的な体力が養われます。人生の困難に直面した時、それを原理的に考え、理解するための力を与えてくれます。教育が目的とするものは、知識なんかじゃなく、こういう力だとぼくは信じています。(ただ、結果的に、知識のために読む人よりも、このような読み方をする人のほうが、たくさんの知識を得られるのですけれどね。)
 読める力を養う方法は、考えながら読むということに尽きると思います。秋の夜長、ひとり本と語り合ってみることをお勧めします。(S)

学習力創造アカデミー 学創(GAKUSO)