君はパナソニックという会社の名前を聞いたことがあるでしょう。このパナソニックの前身である松下電器という会社をつくったのが松下幸之助さんという方です。この方は、経営の神様と呼ばれた偉い方です。
この松下さんに『道をひらく』という著書があり、その中に「心配またよし」という箇所があります。ちょっと引用してみますね。
憂事に直面しても、これを恐れてはならない。しりごみしてはならない。“心配またよし”である。心配や
憂いは新しいものを考えだす一つの転機ではないか、そう思いなおして、正々堂々とこれと取り組む。
力をしぼる。知恵をしぼる。するとそこから必ず、思いもかけぬ新しいものが生み出されてくるのである。
新しい道がひらけてくるのである。まことに不思議なことだが、この不思議さがあればこそ、人の世の
味わいは限りもなく深いといえよう。
君の人生には関門があります。受験もその一つでしょう。こういう関門を前にして、多くの人は心配になるものです。大丈夫だろうか。うまくいくだろうか。失敗しないだろうか。こういう考えが浮かぶのは当然のことです。
松下さんは、そうした心配について、「よし」と言っている。この心配のおかけで、ぼくたちは努力をするし、そのおかげで、成長したり道がひらけたりすると言っている。
岡本太郎さんという芸術家も同じようなことを言っています。
いつでもなにかにぶつかり、絶望し、そしてそれをのりこえる。そういう意志のあるものだけに、人生が
価値をもってくるのです。
ぼくはたまに、スーパーマリオのことを考えます。もしあのゲームが、敵も出てこなくて落とし穴もなかったら、どんなゲームになるだろうと。おそらく、とてつもなくつまらないゲームになるでしょう。
人生も同じだと思うのです。行く手を阻むもの、心配を呼び起こすもの、こういうものがあって、それに立ち向かって、努力して、それをのりこえる。道をひらく。こういう人生こそ、本当に価値のあるものだと思うのです。
いろいろな不安を持っている君。がんばろう。努力しよう。のりこえよう。君たちはいま価値ある人生を生きているんです。(S)