伊藤恵さんのピアノリサイタルを鑑賞してきました。ショパン、シューマン,シューベルト、リストなどのピアノの名曲の演奏のどれもが素晴らしいものでした。圧巻は、最後に演奏されたショパンのエチュード全12曲。ショパンのエチュード全12曲がすべて一気に演奏されるのを観るのも初めてでしたが、その一つ一つに込められた伊藤さんのゆるぎない確信と情熱に深く心を動かされました。
伊藤さんは、ミュンヘン国際音楽コンクールピアノ部門で日本人で初めて優勝した日本を代表するピアニストで、東京藝術大学教授、桐朋学園大学特任教授として、後進の指導にも当たられています。
エチュードは技巧を鍛える練習曲のことですが、ショパンのエチュードは、ご存知の通り、コンサート曲としても耐えうる音楽性を備えており、非常に高い技巧とともに表現力を要求するものです。それを全12曲一気に弾くわけですから、大変な修練が必要であることは言うまでもありません。
弾き終わって伊藤さんが語られたことばにも感動しました。日本を代表する作曲家であった武満徹さんのことばを引いて「魂のエチュード」ということをおっしゃられたのです。練習曲とは何か。それは魂にとっての練習曲だというのです。技を磨くだけではなく、魂を磨くためにこの大変な曲を弾き続ける。一流である人は、自分と向き合い、自分の魂を磨くために日々修練しているのです。
翻って、わたしたちはいま勉強に向かっています。受かればいい、点が取れればいい、という勉強では、いつか伸び悩む時が来ます。簡単に点をとることよりも、今目の前にある勉強を、魂を磨くためにおこなう。いま勉強に向かう姿勢に、将来一流になれるかどうかがかかっているのです。学生時代の勉強は人生のエチュードです。君たちは魂を磨く勉強をしていますか。(S)