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ラジオを分解してみる

 私が幼かった頃、周囲の大人たちが技術者になった人のことを指して、「あいつは小さい頃から、ラジオを分解したりしていたからな」なんてことを言っていました。私は子供心に、ラジオを分解してみるというある意味ムダな行為に、心惹かれるものを感じていたことを覚えています。
 ラジオを分解するのはどうしてでしょうか。彼らはおそらく、その原理を知りたかったのだと思います。ラジオは、電源を入れて、チューニング(昔は手動で放送局の周波数に合わせていたのです)すれば、誰でも聴くことができます。そのやり方を教われば、小学校に入る前の子供だって利用できるものです。でも、分解する人はそれで飽き足りなかった。どうしてそうなるのかを知りたかったわけです。
 そうした気持ちをもった人たちが、大人になって、新しいものを創る人に育っていくというのは面白い事実です。ラジオの使い方を知って満足していては、技術者として何かを生み出すまでにはいたらなかったでしょう。原理を理解しようとして分解するなどという、ある意味ムダな行為をする人だったから、技術者として、新しいものを創造できる人に育っていったわけです。
 勉強も同じでしょう。解の公式を教われば、たしかに二次方程式は解けます。でも、どのように解の公式が成立するのかを理解しようとする人でなければ応用はできません。実際、数学が得意になる人は、公式の意味を理解しようとする人です。解ければいいやと考えている人で、長い目で見て、勉強が得意になる人はいません。
 点が取れればいいとか、ラジオは聴ければいい、なんて考えでは、応用はできないのです。その原理はどうなっているんだろう、もっと知りたい、と考えるところに、新しいものを生み出す力が生じてくるのです。ラジオを分解してみるという、ある意味ムダな行為をしようとする気持ちにこそ、発明家になる芽が出てくるのかもしれません。
 世の中のことをすべて原理から理解するのは大変なことです。でも、だからといって、何でもかんでも与えられるままに受け取って、できればいいじゃんの心持ちでは、凡百の中に埋もれてしまうでしょう。なにか一つでも、他人より深く原理を理解しようという気概を持ってほしいと思います。
 皆さんは目の前の「ラジオ」とどう向き合いますか。(S)

学習力創造アカデミー 学創(GAKUSO)