以前この欄で「『読める』かどうかが、人生を決める」と題して、新井紀子さんの『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)を紹介しました。本書に依拠しながら、基礎的読解力と偏差値が極めて高い相関関係にあること、また、教科書を読まないプリント学習やドリル学習では必ず伸び悩んでしまうということをお話ししました。
実は先日、新井紀子さんの講演を聴く機会に恵まれました。講演内容は本書と大いに重なっていましたが、生の講演ならではの新たな気づきも多くありました。いくつか紹介したいと思います。
◎できる人には「これ間違える人いるの?」と思える問題が、できない人には「すっごい難しい」こと。そして、できない人は、不思議な勉強の仕方、非本質的な勉強法で乗り越えてきたのだろうということ。(テスト前だからと塾を休んだりする人、ここよく聞いてくださいね。)
◎日本の多くの高校生が、定義を読み取ることが苦手であるということ。中学校の理科の教科書には定義表現が小学校の理科の教科書の5倍くらい出てきていて、ここでつまずいて、暗記でどうにかしようという変な読み方を覚えてしまうのだろうということ。
◎科目の好き嫌いとその科目の能力値には何の関係もないこと。たとえば、計算ができるから数学が得意だと勘違いしている子がいるのだろうということ。
◎おなじ70点でも、ドリルでかさ上げしている子と、わかっているのにおっちょこちょいで間違っている子がいること。学校の先生が気に入っている子の方が実はよく読めていないことが多いということ。
私は経験から、新井さんの指摘に大いに頷きます。勉強って正しく学べばとても簡単なのに、横車を押すような勉強の仕方をする子がいて、将来伸び悩んでいくのを見てきました。テスト前に意味もわからず暗記して詰め込む勉強では、その先の理解が無いことに気づいてほしいと思います。
新井さんは、「中学を卒業するまでに、中学校の教科書を読めるようにすることが、公教育の最重要課題」という言葉で講演を終えられました。本当にそう思います。学創がそれを目指していることは、皆さんにはわかりますよね。
高密度に接することのできる夏は正しい勉強法を体得するチャンスです。この夏、正しい勉強にしっかり向き合いましょう。(S)