先日、ある研究会で、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)の教育での活用について学ぶ機会がありました。君は、日本の学校教育でのICT活用は世界でどれくらいの位置にあると思いますか? 世界のトップランナー? 世界の真ん中くらい?
実は、日本の教育におけるICT活用は、OECD加盟国(豊かな国の集まりと思ってください)の中では、ダントツのビリです。ダントツです。
当然と思った人もいると思います。だって、学校の勉強のことを考えてみれば、勉強のためにICTなんてほとんど使ってないものね。
かつて、社会生態学者のピーター・ドラッカーという人は「教育の最大の障害は、職を奪われることを恐れる教師である」と言いました。新しい素晴らしいやり方が出現しても、今までのやり方を変えたくない大人たちの抵抗があるのかもしれません。
さて、學創の中学・高校部がオンライン授業化して1年が過ぎました。入試では立派な結果も出ました。君たちの多くがどんどん学力を上げている。ぼくは、オンライン授業にして本当に良かったと思っています。君たちもそうでしょ?
でも、大人たちのなかには、オンラインというだけで疑いを持つ人たちもいます。変化が怖いんでしょうね。
「オンラインだと集中できないんじゃないですか?」「オンライン授業はうちの子には合わないんです」等々。
オンラインで集中できないなんて嘘ですよね。集中している子がたくさんいる。たぶんオンラインで集中できない子は、普通の対面授業でも集中してないでしょう。オンライン授業の問題じゃないよね。また、どこかの下手なオンライン授業が合わなかったからと言って、すべてのオンライン授業が合わないなんて決めつけは良くないよね。
君たちは、遊びでは普通にICTを使っているし、大人の仕事の世界だってICT無しなんてもう考えられません。それなのに、なぜか、子どもの勉強に対しては原始時代に戻りたそうな発想が出てきて、ぼくはびっくりしています。
學創という塾が、けっこう「ふつうじゃない」ことは、今さら説明しなくてもいいと思います。学年の混じった複式学級だし、徹底的なワークショップスタイルだし。でも、君たちは実際に体験してみて、これを支持してくれた。やらずに拒否するのはやっぱりダメだよね。
さて、研究会で学んだことを記します。「ICTの教育利用がうまくいくためには?」
ぼくが確信したことは、「学習者中心の授業であること」と「トラブルを恐れないこと」の二つです。授業は君たち生徒のためにある。でも、このことをわかっていない教師がいる。そういう人には、ICT活用はできそうもありません。また、ICTに限らず、新しいことを導入すれば、トラブルは付き物です。トラブルを恐れる人には、ICT活用はできないでしょう。仕事のほとんどは実はトラブルへの対処なのに、そういうのを嫌うなんて変なんですけどね。
ぼくは日常に変化を与えていきたい。明日を乱したい。君たちは、どう生きますか?(S)