会社における業務効率化で、ムリ・ムダ・ムラを無くすことの大切さがよく語られます。ムリ(無理)とは負荷が能力を上回っている状況であり、ムダ(無駄)とは負荷が能力を下回っている状況であり、ムラとは無理と無駄が交互に起こっているような状況です。ムリ・ムダ・ムラが少ない会社は繁栄し、多い会社は大変だというのは、君にも予想できるでしょう。
ところでこれは会社、つまり大人たちだけの話ではありません。できる生徒とできない生徒の違いも、これらの言葉でかなり説明できるのです。
できる生徒は、普段からコンスタントに勉強し、力を蓄えていきます。できない生徒は、普段は何もしないのに(あるいはしないから)、テストや入試前になって、能力を上回ることをしようとするのです。
確かに、テスト前になって、間に合わないと必死になることは誰にもあることです。しかしできる生徒は、そうした経験を繰り返すうちに、より早くから準備を始めるようになり、余力のある日(無駄な日)を減らしていき、直前期に無理が生じないようにしていけるようになったのです。
さて、今回の題名には、「生態学」と付け加えました。生態学というのは、生物と環境の相互作用を観察・分析する学問です。ここでは比喩的に、ムリやムダやムラがどんな関係にあるのか、そして、どのような環境と相互作用するのかを考えてみたいのです。
少し観察すればわかるように、三者は相互に関係しています。上に見たように、普段無駄に過ごしているから、テスト前になって慌てることがある。また逆に、無理なことを行うと、次に無駄が起こることもよくある。「テストが終わったから、今日は遊びに行こう」なんて、やっちゃう。こうして、ムラが生じる。あるいは、ムラがあるから、無駄な時間が積み重なって、無理が生じるとも言える。
では、どうしてそうなるのか、もう少し観察する環境を広げてみましょう。まず思いつくのは、大人の結果主義です。普段の生活のあり方よりも、テスト結果だけが気になる大人に囲まれると、直前だけ頑張るようになってしまうでしょう。こうしてムラができる。しかし、これは次の理由と比べればちっぽけなものだから、今回は省略します。
決定的な理由があります。ムリ・ムダ・ムラが生じるのは、準備していないからです。何も考えずにその時その時に起こる外界事象に反応するだけの動物的存在に、ムリ・ムダ・ムラが起こるのは当然です。
では、どうして準備ができないのか。それはもちろん目標が無いからです。未来に理想像をプロジェクト(投企)して、そこに向かうなかで、準備は生まれるのに、未来の理想像を描けていないから、準備ができないのです。
だから、君はしっかり目標を持たなくてはいけません。自分でしっかり目標を持ち、その達成のために必要なことを調べたり考えたりして、目標イメージを明確にしましょう。
そうすれば、その目標のために、今日やることの意味が見えてくるはずです。未来の理想をプロジェクトできるところに人間の偉大さの一つがあるのです。
君は君のどんな理想をプロジェクトしますか。(S)
