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「一喜一憂」病

 昔から、受験勉強のアドバイスで最も頻繁に耳にするものの一つが「模試の結果に一喜一憂するな」です。受験情報雑誌などで必ず目にすると思います。では、なぜその道のプロはそうしたアドバイスをするのでしょう。
 それは、一喜一憂が勉強行動を遠ざけるからです。一喜一憂する人はわかると思いますが、一喜一憂には結構なエネルギーを使います。心理学の実験では、感情エネルギーを使ったあとは、やる気や思考力が低下することがわかっています。
 しかし、よく観察してみると、上のアドバイスはあまり役に立たない気がします。なぜなら、一喜一憂するなと言っても、一喜一憂してしまう人はしてしまうからです。すなわち、育ちの中で、そのように条件付けされてしまっているからです。つまり一喜一憂病は、より大きなマインドセット病(性格病)のひとつと言えるのです。
 例えば、成績優秀なAさんは、点数をただのデータとして眺め、できたところもなぜできたのかを検証し、できなかったところは復習の材料として活かします。よくできても喜んだりしません。自分の目標は模試の結果ではないと知っているからです。
 一方、Bさんは、小さい頃から点数を褒められたり残念がられたりしてきたため、どうしても模試の結果が気になってしまいます。点が取れても内容はあまり検証しませんし、点が悪い時はじっくり見るのをやめてしまいます。報告も少し盛ったりします。自分の目標は模試の結果ではないと知ってはいますが、身体の方がどうしても目の前のことに反応してしまうのです。
 一喜一憂病は、小さい頃から作られた物事の見方であるマインドセットに根差しているため、「するな」と言われたところで簡単には治りません。では、どうすれば良いのでしょう。
 ノーベル賞学者のダニエル・カーネマン博士は、人には「速い思考」と「遅い思考」があると言っています。「速い思考」は育ちに根差した直感的な思考です。一方、「遅い思考」は熟慮によって「速い思考」を修正したりコントロールしたりする思考です。そして、「遅い思考」が得意な人は、学業成績が高いことがわかっています。
 ぼくは、一喜一憂病の子たちには、ずっと「自分が一喜一憂してしまうということを自覚しなさい」と言ってきました。一喜一憂という「速い思考」を自覚することが「遅い思考」の働き出しそのものだからです。
 マインドセット病を治すには、自分にそういう性質があることを自覚して、本当に大切なことは何かを考え、少しずつ自分の「速い思考」を飼い慣らしていくしかないのです。
 君たちは、自分の「速い思考」とどう付き合いますか?(S)

学習力創造アカデミー 学創(GAKUSO)