世の中には自分の生活をうまくコントロールしている人もいれば、自分の生活を全くコントロールできていない人もいます。君はどうですか?
たとえば、テスト前に慌てないように早くからテストの準備をできる人は、やっぱり直前に慌てる人よりも、思った通りの点数を手に入れています。でも、できない人は、頭ではわかっていてもなかなか勉強に手を付けられない。こういうことがありますよね。
さて、世の中でよく言われているように、それができない人は、それができる人よりも意志の力が足りないのでしょうか?
先日、このことについて、明治大学で大学一年生たちに向けてお話ししてきました。行動分析学という学問の創始者について話しながら、話の一つの柱として自己管理について、科学はどう教えてくれているかを話しました。
せっかくだから、君にも話しておこうと思います。
まず、意志の力なんてほとんど期待できません。というのも、観察していればわかりますが、早くから準備している子たちは、別に他のやりたいことを意志の力で我慢して、嫌な気持ちをものともせずに勉強をする、なんて態度なんかじゃ全くないわけです。もっとずっとスマートなんですよね。
科学も同じことを語ってくれています。ちょっと複雑なのでかなり大雑把にまとめることになってしまいますが、意志の力を信じていない人の方が、ずっと自己管理が上手にできるのです。
意志の力で自分を動かせないのを知っているからこそ、自分をうまく動かすように工夫する。これが自己管理なのです。
どういうことか。行動分析学での自己管理の公式は「行動が行動を変える」ということです。たとえば、「毎日教科書を5ページ読む」と書いた紙を机に貼っておく。この行動をしておくと、何もしないよりも君が教科書を読む可能性は高くなりそうです。
また、勉強している最中につい携帯電話を見てしまうなら、勉強する部屋とは違うところに携帯電話を置いておき、見るのは違う部屋だと決めておく。この行動をしておくと、勉強が中断される可能性は低くなりそうです。
自己管理がうまい人は、意志の力が強い人ではなく、こういうことをうまくやっている人なのです。
ニーチェという哲学者は「自分とは最も遠い者だ」と言いました。自分こそ一番の他人なのです。他人に思った通りに動いてもらうためにはどうしますか?
無理やりじゃ、自分からは動いてくれなくなります。相手が気持ちよく動けるように、環境を整え、頼み方を工夫するでしょ。一番の他人ならなおさらです。自分を尊重し、丁寧に扱うから、自分を動かすことができるんです。自己管理は自分を大切に扱うことが根本にあるのです。
さあ、君たちは、どう自分とつきあいますか?(S)