今回は謎の多い人物、しょうじ君について少しお話ししたいと思います。
しょうじ君は、親ひとり子ひとりの母子家庭に育ちました。しょうじ君のお母さんは一生懸命働いていましたが、とても貧しい暮らしでした。お家には図鑑なんて置いていないし、もちろん習い事なんかにも通えませんでした。
そんなしょうじ君が小学生になった頃、近所のあるおじいさんが手紙をくれました。手紙には一万円が同封されていて、「このお金で本を買ってください。」と書いてありました。
そして、さらに有難いことに(その当時は嫌だったんだけど)、「読んだ本の感想文を送ってください。」とも記され、原稿用紙まで同封されていました。
一ヶ月に一冊くらいのペースだったと思います。しょうじ君は感想文を書いて送り、そしてまた手紙が届く、という繰り返しでした。
これはしょうじ君のお母さんにとっても本当に有難いことでした。一万円は本を買うのには十分過ぎる額です。その残りを生活費の足しにできるようにとのおじいさんの配慮だったのです。
しょうじ君は小学校2年生までに20人以上の「偉人伝」を読み感想文を書きました。『ナイチンゲール』や『リンカーン』、『勝海舟』や『北里柴三郎』などなど。
そんな偉人たちにも生き方を教えられながら、しょうじ君の勉強の基礎は鍛えられたのです。その後も貧しい生活は続きましたが、そこで鍛えられた「読む力」や偉人たちの「困難をものともしない姿勢」が、しょうじ君の勉強人生に大きな影響を与えたことは間違いありません。
もし、あのおじいさんがいなければ、しょうじ君はその後勉強を頑張ろうなんて思っていなかったかもしれません。しょうじ君は思い出すたびに、感謝の気持ちでいっぱいになります。
塾や予備校に通ったことのないしょうじ君が、大学生になって塾のせんせいをやってみて、いろんな生徒たちやその親御さんたちと接して、悩んで、一緒に考えて、しょうじ君なりに一生懸命やって、周りが驚くほどの実績を出したのも、そして、学創をつくったのも、その感謝の気持ちが根本にあるからです。
ぼくたちは、誰かが誰かのためになるような世界に生きているんだと、ぼくは信じています。ぼくたちは、世代から世代へ、生きることにおいて「魂のリレー」をしているのだと、ぼくは信じています。しょうじ君もたぶんそういう気持ちなのだと思います。
しょうじ君はおじいさんにもう恩返しはできないけれど、その恩を君に送ることはできる。しょうじ君はしっかり「恩送り」できるように生きたいと思っているんだと思います。
しょうじ君に幸あれ! 君に幸あれ!
君たちはどう生きますか?(S)