若い友人たちへ
ぼくが仕事で誇りにしているのは、教え子たちの存在です。
「青は藍より出でて藍より青し」の言葉どおり、ぼくをはるかに超えて立派な人生を歩んでいる皆の存在が、この仕事のやりがいにつながっています。
教育という営為は、どこまで行っても「未熟な者が未熟な者を教える」域を出ることはありません。
だから、教える側も学びつづけなければならないのはもちろんのこと、最高の形態は、共に成長し、共に困難を乗り越えていくということになるのだろうと思います。
こうすれば良いという方法論は、この変化の激しい時代にはすぐに陳腐化します。そうした方法論を伝えることよりも、どうやって困難に立ち向かい、どうやって手がかりを見つけ、どうやって解決するかを、共に実践することの方が、はるかに人生に役立つでしょう。
塾の指導と言うと受験対策だと思われがちですが、ぼくが大切にしているのはそんな陳腐なものではりません。そんなことをしていては、決して「出藍の誉れ」は生じないでしょう。受験においても人生においても本当に大切なのは、「何をやればいいか」という道具の問題ではなく、「どのようなマインドセットでやるか」という君の問題なのです。
マインドセットの効果は非常に大きなものです。現代教育に多大な影響を与え続けているアメリカの教育哲学者のジョン・デューイは、教育とは環境の作用を通して価値観を形成するものだと正しく見抜いていました。その価値観によって、人の意欲の方向性や学習態度、そして習慣が決まります。そしてそれが結果につながるわけです。
ぼくはかつての教え子たちにずっと語りかけてきました。それは少しく彼らの価値観を変えました。人生に影響を与えるのは、目先のちっぽけな結果ではありません。人より早く準備できることであったり、人より努力できることであったり、人と良い関係を作れることであったり、信じる力の方なのです。
これらのことを最近は非認知能力と呼んで、学者も注目するようになりました。しかし、昔から ちゃんとした教師は、何が大切かを知っていたのです。
君の成績に、そして君の人生に、本当に効くのは、本当の教育、つまり、多くの実践・研究から 導き出された正しい価値観の伝達なのです。
今月もぼくは君に語りかけたいと思います。
君はどう生きるか?
- Sより